不育症とは?
不育症とは、妊娠には至るものの何度も流産を繰り返してしまう状態のことをいいます。
2回以上流産してしまうことを反復流産、3回以上繰り返してしまうことを習慣流産といいます。
何回流産繰り返してしまうと不育症とするかに関しては、定義がはっきりしていません。
一般的には2回連続して流産してしまうと不育症と診断され、原因を特定にするために様々な検査が行われます。
出産経験のある人でも、2回、3回と続けて流産となってしまった場合では、続発性の不育症として検査、治療を行う必要があります。
不育症の原因と治療法は?
不育症の原因として有名なものには以下の7つが挙げられます。
染色体異常
カップルのどちらかに染色体異常が見られると、一定の確率で受精卵にも染色体の異常が発生し不育症の原因となってしまいます。
流産の原因の約50%は染色体の異常によるものと考えられています。
女性の年齢が高齢になるに従って、染色体異常による流産の可能性は高くなります。
治療法
染色体異常が原因での不育症に関しては、現状残念ながら防ぐ手立てがないと考えられています。
子宮形態異常
子宮の形に異常があると、そもそも着床しずらかったり、仮にせっかく着床したとしても胎児の成長に問題が見られる傾向にあります。
子宮形態の異常により胎児へ十分な栄養が行き届かなることから不育症の原因となり得ることもあります。
治療法
形成手術を行うことによって治療可能とされていますが、異常の程度によっては手術を行わなくとも十分に妊娠可能とされています。
内分泌異常
妊娠によって必要なホルモンの分泌に異常があることから不育症につながってしまう状態です。
・黄体機能不全
着床直後の高温期を維持するために必要な黄体ホルモンが十分に機能せず不育症の原因となってしまう。
・高プロラクチン血症
プロラクチンというホルモンは、授乳を司っているホルモンです。
授乳期に活発になるホルモンであり、生まれてきた赤ちゃんをしっかり育てるために次の妊娠を抑制する働きも担っています。
授乳期でないにも関わらずプロラクチンの分泌が活発になることを、高プラクチン血症といい、妊娠を抑制する働きをしてしまうことから不育症の原因となってしまうのです。
治療法
内分泌異常による不育症に関しては、異常の見られるホルモン分泌量をコントロールするための薬物療法による治療が効果的とされています。
凝固因子異常
血液を固め、血を止める機能に異常が見られると、胎盤の中に血の塊である血栓ができやすくなってしまいます。
胎盤内に血栓ができてしまうとお腹の中の胎児への栄養供給が十分に行われず、不育症を招いてしまう原因になりえます。
治療法
血栓を防ぐための治療法に、低用量アスピリンの服用が効果的とされています
服用開始後の状態から服用量や服用時期の調整を行います。
またヘパリンという薬を皮下注射によって投与するヘパリン療法も血栓を防ぐ上で効果的な治療法となります。
抗リン脂質抗体
抗体とは本来、病原体などが体内に侵入してきた際に自分の身を守るための防衛システムとして働きます。
この抗体に異常が見られると、攻撃する必要のない自身の体を異物として捉え攻撃してしまいます。
抗リン脂質抗体があると、血栓ができやすくなってしまい不育症を引き起こすきっかけになりえます。
治療法
凝固因子異常と同様、血栓を防ぐための治療法として低容量アスピリンの服用、またはヘパリン療法が有効とされています。
拒絶免疫異常
お腹の中の赤ちゃんの半分は、パートナーである男性の組織によるものです。
男性の組織は、女性の体からすると異物として捉えられるリスクがあります。
正常な妊娠では、男性組織を異物とは見なさないメカニズムが女性に組み込まれているのですが、拒絶免疫異常となってしまうと男性組織を異物とみなし攻撃してしまい不育症につながってしまうことがあります。
治療法
ピシバニール免疫治療が有効とされています。
ピシバニールを接種することによって、受精卵の夫由来とされる部分に対する免疫反応を正常に調節する効果があります。
ストレス
ストレスはあらゆる病気、不調の原因となりえます。不育症も例外ではありません。
人間は、強いストレスを受けると血管が収縮し血流の悪化や、ホルモンバランスの乱れを引き起こします。
ホルモンバランスが乱れると、妊娠に重要な役割を果たすホルモンが十分に機能せず、流産となり不育症の原因となりえるのです。
過去に流産経験のある人は、再度流産を繰り返してしまうのではないかといった不安からストレスを感じやすい傾向にありますので特に注意が必要です。
治療法
ストレスのコントロールには、適度な運動、趣味に没頭する時間の確保などが有効です。
自分でストレスをコントロールすることが難しい場合は、カウンセリングを受けてみるのも良いでしょう。
不育症と診断されたけど妊娠できる可能性は残されているの?
不育症と診断されたケースでも、8割以上の人は出産することができると考えられています。
不育症の約半数にあたる人は、特別カップル間に問題がある訳ではなく、たまたま胎児の染色体異常が重なった結果の流産なのです。
このようなケースでは特別な治療を行わなくとも妊娠できるとされています。
一方で残りの約半数の人に関しては、何かしら不育症につながる因子を持っているため専門的な治療が必要となってきます。
流産の回数と妊娠率の関係性
流産の確率ですが、女性の年齢によって大きく変動します。
20代女性:およそ10%
30代女性:およそ20%
40代女性:およそ40%
意外に高い数字に驚かれたのではないでしょうか。
1回、2回の流産であれば、その後無事出産に至るケースが多いのですが6回以上の流産を経験している人となると、なかなか治療による成果を期待するのは難しいと言わざるをえません。
不育症の危険因子を見つける検査とは?
不育症につながる危険因子の有無を検査する方法として以下のようなものが挙げられます。
夫婦の染色体検査
血液検査を行い、夫婦の染色体に不育症につながる問題がないかを検査します。
ホルモン検査
妊娠に重要な役割を果たすホルモンの分泌に問題がないかを血液検査によって確認することができます。
自己抗体検査
血液検査によって、自己抗体の有無を検査し不育症の原因有無を確認することができます。
子宮卵管造影検査
不育症の原因の多くは、卵管の癒着や詰まりによるものです。
子宮卵管造影検査を行うことによって、卵管の状態に問題がないかを確認することができます。
子宮鏡検査
子宮鏡検査では、直径約3mm~5mmほどの細いファイバースコープを膣から挿入し子宮の内部を観察します。
子宮の内部に不育症につながる、子宮筋腫や、子宮内膜ポリープ、子宮の奇形、癒着有無を確認することができます。
まとめ
流産の多くは防ぎようのないケースが多いという事実がありますが、原因によっては事前に治療法が見つかる可能性もあります。
最近ですと、不育症の専門外来や専門医院も増えてきてますので複数回流産を経験されてしまった方は、一度信頼のおける専門医に相談されてみることを推奨します。