人工授精の妊娠率をあげる秘訣!気になる妊娠率、リスク[まとめ]

専門病院での不妊治療となると、自然妊娠に近い手法から治療をはじめて様子を見ながら治療のレベルを上げていきます。
この記事では、比較的、自然妊娠に近いとされる人工授精(AIH)の気になる妊娠率、リスクについてまとめました。

人工授精(AIH)とは?

男性から採取した精液から質の高い精子を集めて、女性の子宮腔に人工的に注入し妊娠を試みる方法となります。
一般的にはタイミング指導を半年程度、試みたにも関わらず妊娠できなかった場合にステップアップとなり人工授精(AIH)を検討する流れになります。

人工授精と聞くと、さも自然妊娠とかけ離れた治療法をイメージする人が多いのですが、実際はかなり自然妊娠と近しい妊娠プロセスとなります。

人工授精(AIH)の進め方

Step1:排卵日の予測

人工授精による妊娠率を高めるためには排卵日の予測が鍵を握ります。
人工授精によって精子を注入するわけですが、精子を注入したタイミングで肝心の卵子が授精可能な状態でなければ妊娠に至ることはありません。
人工授精を進める際には、まずはしっかり卵子が排卵されるタイミングをつかむ必要があります。

超音波検査

超音波検査により、卵胞の大きさが計測できます。
卵胞の大きさは、排卵直前となると18mm~22mm程度の大きさとなることで知られています。
超音波計測を行った際の卵胞の大きから排卵日の予測が可能になります。

尿検査

尿に含まれる、LHと呼ばれるホルモンの値を計測します。
LHの値と排卵のタイミングには密接な関係があるために、尿内に含まれるLHの量から排卵日の予測が可能になります。

超音波検査と尿検査の結果により、かなり高い確率で排卵日の予測ができます。
人工授精(AIH)による妊娠の可能性を高めるポイントは、いかに妊娠の確率の高いタイミングで精子を注入できるかにあります。

Step2:精液の採取

一般的には、Step1にて予測された排卵日にカップルで病院にいきます。
病院に着いたら採精室と呼ばれる部屋で、男性がマスターベーションを行い指定の容器に精液を収めます。
病院での精液の採取に抵抗のある男性の場合、自宅で精液を採取することを許可している病院もあります。
その際は精液を冷やさない、できるだけ時間を経過させずに新鮮な状態で病院まで持ち込むなど、いくつか注意事項を守る必要があります。
採取した精液を30分ほど洗浄、濃縮し人工授精(AIH)に備えます。

Step3:子宮内へ精子を注入する

Step2で準備した精子をカテーテルを用いて子宮腔に注入します。
麻酔などをする必要はなく、痛みを感じることはありません。
時間はさほどかからず、精子の注入後は10分程度安静にします。

Step4:黄体管理

子宮内に注入した精子が順調に卵子の中に飛び込めると受精卵となり子宮に移動していきます。
子宮に移動してきた受精卵が着床して成長すると妊娠に至るのですが、着床しやすい環境を作るためには、黄体ホルモンが正常に機能する必要があります。
人工授精後に黄体ホルモンの分泌状況を確認し、分泌が十分でないと判断されるケースでは、黄体補充治療を行い着床の可能性を高めます。

なぜ人工授精(AIH)で妊娠率が上がるの?

元気で質の良い精子を、卵子との出会いの場である卵管膨大部の近くまで人工的に運んであげることによって受精しやすくなり、結果として妊娠率が上がります。

人工授精(AIH)が効果的なケース

  • タイミング指導に基づき妊娠を試みたが、妊娠に至らなかった
  • 男性の精液検査を行った結果、精子の濃度が薄かった、または運動率が低かった
  • 射精障害、または性交障害がある
  • 女性の頸管粘液に異常があり精子が卵子と出会うのが難しい

通常のセックスのように女性の膣内への射精が難しい、仮に射精ができたとしても精子に元気がない、精子に元気があったとしても頸管粘液(膣内の粘液)により精子が食い止められてしまう、といった症状において人工授精は非常に有効な治療と言えます。

人工授精(AIH)に向かないケース

人工授精は、あくまで精子が卵子と出会える可能性を高めるための治療となります。
妊娠のプロセスとして、精子と卵子の出会い以降に大きな問題を抱えられているケースにおいては、人工授精を繰り返し行ったとしても妊娠に至ることはありません。

人工授精(AIH)の成功率はどのくらい?

人工受精(AIH)の1回あたりの成功率は、約7%〜10%程度と言われていますが女性の年齢によって成功率は大きく異なってくるとされています。
5回〜8回人工授精を行うことによって、約3割のカップルが妊娠に至るとされています。

以下は、2008年にイギリスで実施された調査の結果です。
女性の年齢別人工授精による出産率
35歳以下:15.8%
35-39歳:11.0%
40-42歳:4.7%
43-44歳:1.2%

女性の年齢が上がるにつれ卵子が老化してしまうことが、妊娠率に大きな差異が生まれる原因です。

排卵誘発剤を一緒に使うと妊娠率が高まるって本当?

排卵誘発剤を併用することによって、人工授精(AIH)の成功率は1.5倍程度に高まります。
排卵誘発剤の使用によって、通常であれば1生理周期において1個しか排卵されない卵子が複数個、排卵される可能性が高くなります。
排卵される卵子の数が増えることによって、妊娠の確率は高くなりますし、同時に双子、三つ子などの多胎妊娠となる可能性も高まります。

人工授精後、気をつけるべきこと

基本的には、通常通りの生活を行って問題ないとされています。
人工授精による妊娠のプロセスは、自然妊娠と大きく変わらないことから特に神経質になる必要はないようです。
ただし、妊活を始めたカップルにおいては常識となる禁煙、禁酒、葉酸の摂取は心がけておきたいところです。

生まれてくる赤ちゃんへのリスクはないの?

人工授精のプロセスと自然妊娠のプロセスは大きく変わらないことから、赤ちゃんへのリスクは特に無いと考えられています。
先天異常を持って産まれてくる確率は自然妊娠と同等と報告されています。

人工授精(AIH)を受けるのに必要な費用は?

不妊治療に関して助成金の対象となるのは、体外受精以降の治療となります。
人工授精(AIH)を行う場合は自己負担となります。
病院にもよりますが、費用の相場観としては1回あたり1万円〜3万円となります。

人工授精(AIH)での産み分けは可能なのか?

パーコール法という手法を用いることで希望している性別の確率を高めることは可能です。
男性の精液の中にいる精子はY染色体を持っている精子とX染色体を持っている精子に分けられます。
Y染色体を持っている精子は男の子、X染色体を持っている精子は女の子となります。
パーコール法は、Y染色体とX染色体の重さの違いを利用した産み分け方法です。
精液を遠心分離機にかけることで、Y染色体より重いX染色体を持った精子が下の方に集まります。
下の方に集まった精子を人工授精に用いることで、女の子が生まれる確率が上がります。
ただし、あくまで確率が高くなるという話で成功率は60%〜80%程度です。

人工授精(AIH)でも妊娠できない場合はどうするの?

人工受精を5回〜8回程度試みたにも関わらず、妊娠に至らないケースでは、体外受精、または顕微授精へと不妊治療のステップを引き上げることを検討する必要があります。
人工授精によって、妊娠に至った人の約90%は6回目までに妊娠しているという報告があります。
8回程度、人工授精を試みたにも関わらず妊娠に至らないということであれば、それ以上、人工授精を繰り返しても妊娠の期待は薄いと言わざるをえません。

まとめ

人工授精、想像していほど仰々しい治療法でないということがご理解いただけたのではないでしょうか?
費用も1万円〜3万円程度と数十万円の費用を要する体外受精と比べると、さほど高額でない割に、7%〜10%程度の妊娠率が期待できます。
不妊期間の長いカップルは、一度人工受精(AIH)を視野に入れた不妊治療を考えてみても良いのではないでしょうか。