人工授精と体外受精は混同されやすい
どちらも似たような言葉なので、良く混同されてしまいます。
二つの言葉をよく見ると、授精と受精になっていて少し意味が違います。
それぞれの意味は
受精:卵子と精子が出会ってから精子が卵子に入り融合するまでのプロセスのこと
授精:卵子や生殖器に精子をふりかけたり注入する行為のこと
となっています。
同じような言葉ですが、意味が違うので不妊治療においては注意が必要です。
人工授精はどういう方法?
人工授精はやわらかいチューブの注射器をつかい、子宮の中に精子を送り込みます。
自然な妊娠方法である、セックスにかなり近いです。
通常のセックスでは、精子は膣内に射精され子宮頸管を抜けて卵子を目指します。
子宮の入口の子宮頸管が精子にとっては難関で、大量の精子がここで死んでしまいます。
自然妊娠ではこの難関を突破して卵子までたどり着ける精子の数は膣内に射精された数億のうち数百〜数千しかありません。
人工授精は、直接子宮の中に精子を入れてしまいます。
だから、精子が難関を突破した状態からスタートできるのです。
そうすると、関門で死ぬ精子がなくなり、受精する確率が上がるというわけです。
人工授精は、膣内射精が出来ない、軽度の男性因子、頚管粘液の分泌不足などの不妊の原因には効果があります。
精子自体の問題である、精子が少ない、運動量が低い精子などにも特に有効です。
不妊治療を受けるカップルの人工授精の妊娠の成功率は5〜8%となっています。
難関を突破した状態でも、成功率は1割以下なので、妊娠の難しさがよくわかります。
体外受精はどういう方法?
体外受精は女性の体内から卵子を取り出し、卵子と精子を体外で受精させます。
自然妊娠では、さきほども説明したように膣内に射精された精子が難関を突破して、卵子にたどり着くことを目指します。
体外受精は、このプロセスすべてを人工的に行ってしまいます。
精子はゴールである卵子までたどり着いた状態で、子宮の中に戻されます。
授精の方法としても、取り出した卵子と精子をふりかけるだけの方法と精子一つを選んで直接卵子に入れる方法があります。
精子の状態によって様々な方法を選んでより確率の上がるようにしていきます。
人工授精と体外受精の判断基準
精子濃度×運動率で著す運動精子濃度という数値があります。
一般的に人工授精には、この運動精子濃度が1000万/ml以上が望ましいです。
もし、500万/ml以下だと体外受精を選択することになるでしょう。
判断は専門医が下してくれるので、あとはそれを受け入れるかどうかということになります。
高齢になればなるほど高度な不妊治療の技術が必要になり、人工授精でうまくいかなければ卵子を取り出して体外受精を試みます。
精子の質が低ければ、体外受精でもさらに精子を選んで卵子に入れるところまで人工的に行うということになります。